いろんな意味で世紀のクライム映画、20世紀少年第一章
20世紀少年(第一章)
いよいよ20世紀少年三部作の第一章が公開された。
公開からすでに二週間以上経ってから見に行ったが、平日にも関わらず結構な人の入りで以外であった。
キャスティングは良くできていて、原作の雰囲気をしっかりと残している。少年時代の役者にも相当に気を配ったようで、違和感無く見ることができた。
原作はすでに終わっており、自分も全作読んだのでストーリーは判っているので、キャスティングがこの映画の重要なポイントとなるが、その点では良かったと思う。
ただ、原作を最初に読んだ時のワクワク感が感じられなかったのが残念だ。
映画的に脚本を作っていると思うが、もうちょっとスリルとサスペンスを盛り込んでもらいたかった。
今回は友民党が自作自演のテロで、単なるカルト教団から日本の政治の主流となり、その悪の手を世界に広げ始めるところがメインとなっているが、肝心の友民党の成り立ちがばっさりと切り捨てられていて、対するケンヂ一派の緊迫感というか切迫感がいまいち伝わってこない。
また原作を読んでいる時は、政権を乗っ取るための爆破テロというアイデアになぜか妙なリアル感を感じたが、映画からはそれが感じられなかった。
現実の現在は政治不信のまっただ中にあるので、原作での展開はもしも本当にあったらという妄想を多いに膨らましてくれたので残念だ。
とはいえ、ストーリーも結末も判っている原作を元に脚本を作らなければならないのは大変な事だと思う。脚本に原作者の浦沢直樹と編集者の長崎尚志が名を連ねているが、逆にこの二人を排除し読者側からの視線で脚本を組み立てた方が良かったかもしれない。
第二章ではさらに激動の時代となるので、どのように映画として組み立てるか楽しみだ。
全体的に見て大げさな前評判に対して負けずに作られており、良くできているという印象だ。ただ、もう少しスリルのある展開を期待していたのだが。
あとこれは私が見た劇場だけかもしれないが、夜や地下のシーンでの黒レベルの甘さが気になった。
画面がちょっと明るすぎて、緊張感が足りないのだ。バットマンのダークサイドがすばらしかったのでそれと比較してしまったのかもしれない。
2008年9月17日(水):札幌シネマフロンティアシアター05