草薙水素、キルドレの司令官
草薙水素は司令官でありながらパイロットというキルドレでは珍しい存在だ。
彼女はとびっきりのパイロットであるがため、キルドレの標準をはるかに超えて戦闘を生き延びてきた。
そして、キルドレとは何かと言う事についても多くを知っている。
戦争請負会社の中では司令官は一般従業員ではなく管理職だ。そして一般従業員であるパイロットが管理職になるのは非常に難しい。
パイロットはどんなに腕が良くても空に上がれば常に生死を懸けた戦いをする。敵と遭遇すれば戦闘になり、燃料が無くなるか、弾薬が無くなるか、相手を撃墜するかしないと終わらない。そこには階級なぞは関係ない。そんな損耗率の高いパイロットから司令官になるまで生き永えるのはのはほとんど不可能だ。
いわば草薙水素は奇跡的存在なのだ。
同じ道でも昨日とは歩く場所が違う
函南優一は『明日死ぬかもしれない子供が大人になる必要があるのか』と言っていたが、草薙にとってみれば『キルドレのまま生き永える事に何の意味があるのか』と言うことになるだろう。
おそらく草薙が初めてその疑問を問うた最初のキルドレだ。
だがその疑問に答える者はどこにもいない。草薙自身が自分で見出すしかない。草薙ほど長生きしているキルドレはいないのだ。
しかし、司令官となりキルドレのパイロットの死と再生を見てきた草薙は、ジンロウの後任の函南を見たとき、これで止めにしようと思ったに違いない。同じ運命の繰り返しには我慢がならなかったのだろう。
だが函南が自分の閉ざされた(または繰り返される)記憶に気が付いたとき、草薙にも新たな展開が訪れた。
キルドレとして同じ生を繰り返していても前とは違う生き方が出来るはずだ。
映画の最後の『あなたを待っていたわ』にそれが凝縮していると感じた。
ここに押井監督が言う『僕は今、若い人たちに伝えたい事がある』
何かがあるのではないだろうか。




