スカイ・クロラ、悲しいキルドレ達

押井守監督スカイ・クロラ。この先ネタバレあり、ご注意ください。
これは悲しい映画だ。
戦闘機パイロットとして戦う事を義務づけられたキルドレが何ともやるせない。
永遠に生きることができると知ってしまったキルドレ達の日常はなんとも現実感のない生活だ。
しかし、パイロットとして空に上がっている時はその瞬間瞬間に強烈な『生』を感じさせる。
死を意識し、生と死の両方を感じてキルドレである事を忘れることができるのはその時だけだからだ。
そして空には絶対的存在としてティーチャーがいる。
だがキルドレにはティーチャーを倒すことができない。それは彼にとってキルドレとの戦いは、常に同じ戦法で戦いを挑んでくるおなじみのカモだからだ。
ティーチャーが相手をするキルドレは過去に何度も撃墜しているクローンだ。ティーチャーと対戦したキルドレは必ず撃墜され死を迎える。ティーチャーに勝った経験を持ち帰ることができないのだ。何度クローンとして蘇っても同じ戦法でしか戦えないキルドレの悲しさがそこにある。ただ一人、草薙水素を除いて。
2008年8月6日(水):札幌シネマフロンティアシアター07
リアルな空中戦と対照的なキルドレ達
スカイ・クロラを通して感じるのはリアルな空中戦の様子に対してどこか空虚なキルドレ達の日常だ。
旧日本海軍の幻の戦闘機『震電』そっくりな散香が繰り広げる空中戦のの様子はアニメでしか表現できない美しさと妙なリアルさがある。
レシプロ戦闘機ファンなら第三の主人公とも言える散香の飛行シーンに驚喜する事間違いなしだろう。
空中戦では『戦闘妖精雪風』のシーンもすばらしいが、レシプロ機同士でミサイルを搭載せず、銃撃のみで行われるスカイ・クロラの方がより人間臭い。
散香対ティーチャー操るスカイリィーとの空中戦は、軽快な散香にパワーで襲いかかるスカイリィーが対照的に描かれていて、いかにも子猫に襲いかかる黒豹のようだ。
かたや、地上にいる時のキルドレ達はどうにも存在感が薄い。整備士の笹倉や他の大人達の人間くささがよりそれを際立たせる。唯一激しく感情を表に出すのは草薙水素だけのように見える。
彼女はキルドレの中でも特別な存在だ。多くのキルドレパイロットは司令官になるまでキャリアを積めない。その前に命を落とすからだ。そして再びパイロットとして再生する。
おそらく彼女だけがティーチャーの教えを受けた(あるいは技術を見習った)たった一人の生き残りだろう。ティーチャー並みの技量で撃墜されず長生きをしてしまったのだ。
ロストック社はそんな貴重な存在となってしまった彼女をパイロットから司令官にしてしまった。それがよけいに彼女の苛立をあおり、感情を爆発させる原因の一つにもなっているようだ。
そして司令官であるが故に彼女はキルドレの存在価値を理解しているように見える。だが、パイロットである函南たちにはその感覚が無い。パイロットである事に何の疑問も感じないのだ。
これが永遠の生を与えられた存在であるのに、内面の空虚さを埋めるまで成長する時間を与えられないキルドレの悲しいところだ。




